フィリピンには半端な男たちが沢山住んでいますが、筋金入りの女性も住んでいます。ムイコさんという日本人女性がマニラに住んでいます。
顔所はマニラ湾に面するパサイ市のロハスブルーバード沿いに事務所を構えていました。正式な名前はミホコ・フジモト・ムイコです。ムイコというフィリピン人と結婚したためにこういう名前になったそうです。
1966年にマニラにやってきましたから、想像するだけでも恐ろしい時代にフィリピンに住み着いたと言えるでしょう。当時、日本は高度成長真っ只ですが、フィリピンはまさに発展途上国でした。
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息子の暴力を更生させるためにフィリピンにやってきた父親
当時、エドサ通りはどろんこの道でした。マルコスの前の時代ですから、舗装されている道路のほうが少なかったでしょう。そんなフィリピンで彼女はフィリピン人と結婚しましたが、旦那が恐ろしく頼りない人間だと気づきます。
やむを得ず彼女が働くようになりました。日本大使館やJALに勤め、デューティーフリーのマネージャーとしても働きました。
フィリピンに会社を作ってフィリピンの果物を販売しました。仕事はとても順調でしたが、ビジネスパートナーがマルコス関係で商売をしていましたので、マルコスが失脚すると一気に業績が悪化しました。
そこで繊維工場を作って子供服を製造し、ヨーロッパに輸出するようになりました。繊維工場が順調に業績を上げ始めたところで、フィリピン人に乗っ取られてしまいました。
「ありとあらゆることを経験してきたから、少々のことではびくともしないわよ」と彼女は話します。
1990年代にはスタッフ十数名を抱える旅行代理店とコンサルタント業を営んでいました。家族のような会社で、昼は彼女が作った昼食をスタッフ全員で食べます。
そこに日本人男性が毎回現れます。彼女によれば彼をマニラに住まわせることになったには理由がありました。
彼の名は山崎といいます。山崎がやつれた父親に連れられて彼女の前に現れたのは、1994年頃の話です。山崎が30歳のときです。
彼の父親は技術者で中東に滞在することが多く、日本には年に一度か二度帰国できる程度でした。母親も働いていましたから、山崎は鍵っ子として育ち、父親によれば学校で随分いじめられたそうです。
家は都内の住宅街にある戸建てで、姉が一人いました。
凄まじい家庭内暴力が始まったのは彼が15歳のときでした。部屋に引きこもってしまい学校にも行かなくなりました。今で言う引きこもりです。
ハムスターを放し飼いにしていましたので、万年床の布団に小さなおしっこや糞が放置されています。それを片付けようものなら、恐ろしく怒り始め母親を殴ります。
「ババァ、飯作れ」と怒鳴り、ご飯を作らせると、「こんなクソ不味い飯が食えるか」と言いながら母親を蹴飛ばします。隣の家の赤ちゃんが泣くと、「今度泣いたらぶちのめすぞ」と脅します。
両親は、ただただ息子を怖くなってしまい、彼の言うとおりに生活するようになりました。
「ステレオがほしいからかねを出せ」と言われれば、数十万円のお金を出し、殴られれば息子の気が収まるまで殴られ続けました。精神科に連れて行っても、病院内では普通なのですぐに退院させられます。
暴力を振るうのは両親と姉に対してだけであり、他人に対してはとてもおとなしい人間です。
精神科に連れていくために睡眠薬を飲ませました。そのことを彼は恨み、暴力はさらにエスカレートします。たまらず警察に電話しても、「家庭内のことは家庭内でお願いします」と当時は言われてしまいます。
両親と姉は息子が恐ろしくて何も言えず、何も出来ませんでした。
こうして彼の暴力に怯えながら10年以上を過ごしました。追い詰められた父親は一家心中を試みました。息子を睡眠薬で眠らせて車に乗せ、寂しい山中を走りながら適当な場所に車を停めました。
そしてガソリンをまいたのです。しかし、結構直後に息子が目をさましてしまいました。父親の決心が鈍ってしまったのか、両親に対する復讐が足りないために、ガソリンの匂いで起きてしまったのか…。
あるいは自分はなんとしても生きたいという思いで、本能的に目が覚めてしまったのか…。
「てめぇら、俺を殺そうとしやがったな」と彼は激怒し、今まで異常に暴力を振るうようになります。
父親は息子を太平洋に浮かぶ小島に連れて行ったことがあります。連れて行ったというよりも、捨てに言ったといえるでしょう。南国の島に住む父親の知人を頼りました。
息子を預かってくれましたが1年と持ちませんでした。交番に火をつけたとして嫌疑がかかり、「引き取りに来てくれ」と連絡が入りました。
そしてフィリピンにやってきました。南国の島から直行でマニラ入りしたという点に父親の死の覚悟がにじみ出ていました。フィリピンには問題児を預かってくれるという施設があると聞いたので、と父親は言いますが、そんな施設は見つかりません。
回り回ってムイコさんのところに連れてこられました。
続く
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